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「あさ酒  原田 ひ香」主人公が気に食わないが食ってるものはうまそう、ただし全体的に物足りない

あさ酒 原田 ひ香

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あらすじ

あたらしい朝に乾杯!
26歳で、派遣社員で、婚約破棄されて……。
失意の恵麻に希望の手を差し伸べたのは祥子だった。
〈見守り屋〉見習いの夜勤明け、ほっと一息つく朝の一杯が恵麻に一歩踏み出す力をくれる。
大人気『ランチ酒』シリーズの新章!

「見守り屋、やってみない?」
五年付き合った彼氏から突然の婚約破棄を告げられ、恋人と住処をなくした派遣社員の水沢恵麻。
さらにコロナ不況で仕事まで失い、失意のどん底に。彼女を救ったのは、便利屋「中野お助け本舗」の亀山と犬森祥子だった。
夜から朝まで「見守り屋」の見習いとして働き始めた恵麻に、祥子は仕事終わりの贅沢「朝酒」の喜びを教える。
モーニング×黒ビール、生ハム×赤ワイン、焼鯖定食×日本酒……ワケあり客の話を聞き、夜勤明けの「朝酒」に癒されながら、恵麻は新たな一歩を踏み出していく。

正直に言うと、飯描写は最高なのに、全体的に消化不良。あとシリーズものなら巻数書いとけ! ってのが結論。
軽く読めるのはいいんだけど、色々ともったいないというか、モヤモヤする点が多すぎた。

どっちつかずの印象が残る

この話、コロナで職を、彼氏と別れることで家を失った主人公が、偶然誘ってくれた人がいたことから見守り屋っていう仕事について、そこで出会う人たちの人生ドラマと、仕事終わりの朝酒&モーニングっていう二本柱で進んでいく。でも、短いからかどっちも中途半端な印象を受けた。

一本一本の話が短いせいか、人間ドラマはそこまで深く関われない。人によっては後から補足としてある程度伝えられるがその程度。人の人生に関わるほどではない。
飯シーンはうまそうだけれども、ドラマとはそこまで絡んでない話もある。
ふわっとした連載で読むならいいのかもしれないけど、一冊の本として読むと「え、これで終わり?」ってなる。もっとこう、ガツンとくる何かが欲しかった。

グルメ系の話って今も昔も多いし好かれてるのはわかる。朝酒っていう題材自体珍し目だし面白い。それだけで長編や連作短編はちょっと味として薄い部分もあるから人間の物語を含めるのもわかる。
人間下世話なことが大好きなので(ドデカ主語)なにか訳ありっぽい人と出会ってその人のバックグラウンドをうっすら見られる話は面白い。なにもない人でも、一晩だけ家に他人を呼ぶという行動を取っている人たちだ、きっとなにかあるかもしれない。長くすることもできるが、短くもできる題材。
その2つを組み合わせればいい感じになるかも。
っていうのはわかるんだけど、読んでてあんま噛み合ってないなっていう感じがちょっとあったかも。カレーの話では依頼人からカレーについて話を聞いて気になって食べに来たっていうのがあったけど、他の話じゃそこまで話自体と選ばれるメシも噛み合ってるわけじゃないし。

メシも人間のしょうもねえ話も、全体的にどっちつかず感があった。

店名ぼかすの、正直だるい

食事シーンはマジで美味そうだった。夜だと高い店でも、朝なら安く豪華に楽しめるっていうのはわかる〜! ってなったし、わたしも近所でモーニング開拓したくなった。
ただまあ、モーニングって朝これから仕事するって人間には若干敷居が高いよな。分量が……分量が多い……! 朝は最近はベースブレッドとかなので、作中に出てくる量を見ると結構きつそう。

でもさ、出てくる店が全部実在モデルなのに、名前を絶妙にぼかしてあるのが面倒くさすぎる!
全体的に描写が空想ではないタイプの具体性があるのでGoogleマップで探したら、それっぽい店がすぐに出てきた。調べればわかるくらいなら、もういっそ店名出しちゃってくれないかなと思ってしまう。
取材とか権利とか許可とか、大人の事情があるのはわかる。でも、このぐらいのぼかし方なら検索すればすぐに出てくるんだし、ぼかす意味あるのか? ともなってしまう。完全にぼかすか、架空の店名の架空の店にするかしたらいいのに。

主人公の絶妙な卑屈さ

卑屈というか、自己肯定感が低いというか、いややっぱり卑屈なんだよな……。

なんだろう、この主人公の地の文読んでるとなんとなく気分が落ち込んでくる。うまくいえないんだけどラノベの面倒くさい系主人公の語りを読んでるのと若干近い気分になってくる。いや、あっちのがイキリが強いだけまだマシかもしれない。こっちの主人公、暗い。
そこまで自己肯定感低くないように見せかけて実のところものすごく低いよなとか、この仕事やめたら自分はもう行き場がないと思ってそうなところとか、そういうのが文章の隙間から溢れ出てきてて読んでて「うわ……卑屈な……」と感じる部分が多くてきつかった。

そのあたりはわたしが普段ラノベ読みで、良くも悪くも前向きというか、後ろ向きだとしても厨二病じみてたりして最終的には前を向く、後ろ向きでもそれでもなんだかんだ言ってもわかくて自分の未来に希望があると心の何処かで思ってそうな主人公に遭遇することが多いからかも。
いや、でもこの主人公も24なら全然若いしラノベの転生したタイプの主人公なら死亡時年齢それより上とかも全然いるよな。これは本のカテゴリの違いなのかもしれない。

というか、主人公が合わないのかもしれない。
仕事で何をすればいいのかそこまでわかっていない、不用意な発言で客を怒らせるが何が原因なのかわからない(客原因かつ客もそこまでわかってないので仕方ない)とはいえ、今後どうしたらいいのかを考えたりもあまりしない、突然なんかようわからんライター業に手を出す、婚約破棄の理由がしょうもない相手と元サヤになろうとする。
全体的にこいつが好きになれねえ~! の気持ちが強かった。それでも読みたい話って「好きになれないがこいつが何をしでかすのかは気になる」みたいなときだと思うんだけど、そういう部分を担う食事は微妙にぼかすし、下世話な他人の悩みを覗き見したい欲は微妙なところでぶった切られるしで、本当に消化不良な本だったな……。

巻数書いてないシリーズもの嫌い

冒頭で「見守り屋とは〜」みたいな説明が入るんだけど、これがもう「皆さん当然ご存知でしょうが」感がものすごい。祥子さんってキャラも絶対前作の重要人物だろ!って感じなのに、詳しい説明はないから「誰だよ!」ってなる。

これは少女小説系でも割とよくあるんだけれども、シリーズもので、なおかつどこから入ってもいいですよ状態でもないというのに巻数書いてないの、めっちゃ不親切だなーと思う。これはこの本に限らずなんだけど。
読んだら面白い雰囲気はあるんだけど匂わせみたいな前の巻の登場人物っぽいキャラが意味深な発言をする……みたいなの、うーんとなってしまう。前には2巻と知らずに読んだ本の冒頭で死んだキャラが前の巻で重要な働きをする人物だったっぽいこともあったし。

適当に本屋で気になったから買う、みたいなことをするとこういうのに遭遇しがち。もうふらっと本屋に入って買うより、アマゾンであらすじ確認してから買うべきなんだよな……。
もうありとあらゆる本は巻数を! 書いて! くれ! 頼む!


まとめると、主人公はまるで好きになれなかった。でも全体的には、美味そうな飯と「他人の面倒な人生を覗き見したい」っていう下世話な好奇心だけで読み進めた感じ。するする読めるものの、とはいえ面白いか? 前の巻も気になるか? って言われたら、別にそこまでは……だった。

あさ酒 原田 ひ香

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