どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。(1) (女性向けMノベルス) 六つ花 えいこ
あらすじ
ひっそりと暮らす魔女ロゼは、秘かに片思いをしていた王宮騎士に惚れ薬を依頼され、失恋した。
せめて少しでも長く一緒にいたいと、彼に様々な材料の調達を頼むロゼ。ところが憧れの騎士様は、毎日関係のない食べ物を運んでくるようになり…?
引きこもり魔女と、真面目で上から目線な騎士の、惚れ薬から始まる恋のおはなし。
- 良質の片思い描写をたっぷりと読みたい人
- 惚れ薬という単語に反応する人
- 餌付けが好きな人
片思いって、めちゃくちゃに良い
タイトルからわかるとおりの主人公→ヒーローへの片思いから始まる本。
両片思いからではなく、完全に片思いから始まり、ヒーローから主人公への好感度がないところから始まるのが読んでて面白かった。
魔女である主人公は、顔を知られていないのをいいことに、人に紛れて街へと買い物に行く。
その際にまちなかで魔女が悪く言われているのを聞いて嫌な気持ちになっていたが、偶然そこにいたヒーローが自分もまともに目にしたことがないような『魔女』を庇ってくれているのを聞いて彼を好きになる。
そして4年後、彼女の元に現れたヒーローは「惚れ薬を作って欲しい」と依頼してきた――というお話。
片思い、惚れ薬と来ているので正直テンプレめな話かなと思ったんだけど全然違った。
この話の秀逸なの、主人公→ヒーローへの片思いの描写。
惚れ薬を作るために集めてきてもらうアイテムをわざとひとつひとつ伝えることで少しでも会える期間を伸ばして回数を増やそうとしたり、相手は惚れ薬を求めているのだから好きな人がいるのだろうなと思って悲しくなったり。
「……ありがとうございます」
心が震える。胸が苦しい。この気持をなんと表現するのか、ロゼにはわからない。胸がいっぱいで、息ができないほどに心が乱れていて、すがって泣きつきたくなった。
心配された。それは、ロゼのことを一瞬でも、彼が考えてくれたということ。そばにいたわけでもないのに、街でパンを見て――ロゼに買ってやろうと思ってくれたということ。
あぁ、これは「喜び」だ。ロゼは知った。好きな人が自分を思ってしてくれた行動が、たまらなく嬉しいのだ。
好きな人と、好きなものが同じだった。
ロゼは嬉しくなって、ローブの袖で隠した口元をほんの少し緩めた。
こういった片思いがずーっと綴られていて、ひたすらにかわいいというか、かわいそうというか、この子のこの先を読んでいたいと思わせる子なんだよなロゼ……。
読んでいて、あーーーーーーー幸せになれ! この子は幸せになってほしい! とひたすら思っていた。
しかもこの主人公であるロゼ、これだけの片思いをしていても、今までの過去や経験から表情にほぼ全く出ない。
ほぼ全く出ないから、相手であるハリージュにはバレていないし何を考えているかあまり伝わっていない。でも読者にはわかる。はやくお前ら告白しろーーーーー! くっつけーーーーーー! 頑張れ! 頑張れ!
対する片思い相手であるハリージュは、最初はロゼを知らない。
そんなハリージュが徐々にロゼに対して好感を持っていく流れが自然かつ可愛らしくて、あーあーあーかわいい……かわいいね……と頭を抱えてしまう。
なんとなく、最初は年頃の少女が保護者なしに生きていることに対しての庇護欲から始まっているように見えたのに、それがだんだんと好意となり恋となり愛となっていく流れがあまりに最高だったんだよ。
片思いからの両片思い、からの恋で愛。
もう本当にめちゃくちゃに良かった。
片思い描写がめちゃくちゃに良かった。この片思い描写を無限にくれ。最高に良かった。