「革命は恋のはじまり ~え? 後宮解散ですか!?~ 」自我がしっかりした主人公による政略モノ

★★★★☆,ビーズログ文庫ファンタジー,両片思い,後宮,恋愛

あらすじ

わたしの人生計画、どうなるの!? ドンカン元(?)寵姫とカタブツ少尉のじれっ恋!どん底からはじまる革命ラブ、第1弾!

オズトゥルク帝国の後宮で、"お気に入り様"になるべく日々肌を磨いていたナクシュデルは、ついに皇帝から初のお召しを受ける。いよいよ寵姫の夢に近づいた!! 
ところがその夜。皇帝を待つナクシュデルの前にいきなり武装した男が駆け込んできた。
後宮になんで男性が!? 驚くナクシュデルを前に、国防軍の少尉だと名乗るその男、リュステムは「革命だ。皇帝はすでに逃げた」と告げる。
--は? 今なんて? 
しかも「あきらめて俺の家に来い」ってあんた何者!? 

どん底からはじまる革命ラブ、第1弾登場!

シリーズ: 革命は恋のはじまり

あらすじから期待してなかったけどめっちゃ面白い

正直、本当にあらすじでは全く期待してなかった。
そもそもあらすじが「ドンカン元(?)寵姫とカタブツ少尉のじれっ恋!どん底からはじまる革命ラブ」のあたりで完全に好みとは外れるんだけどなんとなく表紙が良さげで読み始めたらびっくりするほど面白かった。

とにかく冒頭からして面白い。

「ありがとう、頼むわよ。九つの私を奴隷商人に売ったようなひどい親だけど、きれいに生んでくれたことだけは感謝しているの」
「その意気ですわ、ナクシュデル様。大丈夫、自身をお持ちください。美しさに加えて、楽器も吟詠も読み書きの教養も優秀。とりわけ夜伽の作法にかんしては寵姫候補の中では一番だと、指導官からお墨付きをいただいているではありませんか。ナクシュデル様こそまさしく陛下の寵姫となるために産まれてきたお方ですわ」
「そうですとも。果ては陛下のお子をお産みになり、いずれ皇太后の地位にまで昇られるお方だと、私どもは確信しております」
「ありがとう! 私、かならず“お気に入り様“になってみせるから」
 浴室の熱気にやられたのか、威勢のいい言葉を吐きながら三人は熱く誓い合う。

こんな元気なのありかい。
ノリがよく、なおかつ気合に溢れ、売られてきた後宮少女という悲惨めなバックが完全に消え失せた強さで笑ってしまった。

それから最初から最後まで、主人公のナクシュデルはひたすらこの元気さで物語が続いていくのだから良い。とても良い。
主人公はうじうじメソメソしてるよりひたすら元気なほうが見てて楽しい(個人的意見)。

立場の差、生まれの差、男女の差

タイトル通り革命が起きて皇帝は逃亡、後宮の女たちはほとんど放置され、革命軍たちによって旧後宮へと移動させられる。
しかしこれから皇帝のお渡りがあったはずだったナクシュデルは後宮に取り残される。
彼女を見つけた青年少尉リュステム。ナクシュデルに頼まれて一時的に寄り道をし、そのため通行止めにあい旧後宮へと移動ができなくなり彼女を自宅(母親なども在宅)に連れ帰ったことから物語が動き出す。

このリュステムという青年とナクシュデルの立ち位置の差が、描き方がものすごくうまいなと思った。
生まれながらの貴族であるリュステムと、9歳までは貧困でそれ以降は後宮にいたナクシュデルの思考の差や知識の差の描かれ方がうまい。
例えば世間的には有名な革命などひとつとってもナクシュデルは知らないがリュステムは知っている。選挙や投票といった制度を、皇帝が治める後宮で教養を学んだナクシュデルは知らない。
そういった差が、物語に邪魔にならない程度にものすごくさり気なく描かれていて、うわうまい……となった。
他にも、男女で勉強に関して差があるの表現としてすごくさり気なく出てきてて(これは2巻もだけど)うまい。

なんというか、ひたすら『正しい』んだよね。
中盤までリュステムの家にナクシュデルが居候するのもそのままなし崩しに家にいて認められて結婚にいくためのフラグかなと思いきや、途中から彼女のポジション(もともとは他国との境目の町の人間でほぼ他国の血が入っているし外見的にもそれが明らか、貧民で奴隷商人に売られて後宮に入った)を利用し、可哀想話を作り上げてアイコン的なポジションに持ち上げ利用する男が登場したりもする。
ここからはじまる政略が絡んだ部分も面白い。
なんかもう、ひたすらうまい。ただしい。うまい。

淡い恋愛要素だけれども、鈍感主人公にならないレベル

いやこれアオリが『ドンカン元(?)寵姫とカタブツ少尉のじれっ恋!どん底からはじまる革命ラブ』ってあるけどそこまでひどい鈍感じゃなくない!?
鈍感主人公苦手なのである程度覚悟しながら読んだけど全然だったよ!?

リュステムからの好意はそこまで出ないようにしているし、ナクシュデルは『相手の立場のためにそういう感情を持つこと自体がよろしくない』と思っている(実際にそのとおりである)ために自分の感情から目をそらしている部分がある。
これは鈍感って言わなくないか!?
実際二人の恋愛感情に気づいているのも、女たらしの先輩(気づいているというより煽っている?)、使用人の少女(恋に恋するお年頃なのでまあ思い込みとも言い切れる)ぐらいなのもうまい。他の人々は、彼女と彼が恋愛関係に陥ったらまずいからと遠ざけようとしているのであって、互いのうっすらとした感情に気づいているわけではない。

なんかもう、ひたすらうまいし話が面白い……。

めっちゃ良かった。すごい続きが気になる。これは面白い。

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