「せきゆちゃん(嫁)」まってなにこれ何だこのカオス

★★★★☆,ファンタジア文庫両思い,付き合ってる,恋愛,現代

あらすじ

油天国『ユデン』からやってきた、油天使のせきゆちゃん。興奮すると石油を噴き出し、洗剤が苦手で、そしてもちろん火気厳禁。
そんな彼女と結婚した俺がどうなったかって?……石油王になりました。

ヒロインは興奮すると石油を出す油天使である。何を言っているか若干どころではなくわからないが、ヒロインは油天使である。
彼女が金欠兄妹により発掘され、そして主人公である兄と結婚することとなり、彼が石油王となる物語……とでも言えばいいの!? ねえこれなんなの!?
もうあらすじからして頭おかしいし、何言ってんのかめちゃくちゃだし、ちょいちょい出てくる油ギャグもなんなんこれって思うんだけど、でもラブコメだし熱いし最後はすっごく良かったし油……油ギャグってなんなんだろうな……。

「自分の匂いとか分からないんですが、私は油天使なので……ひょっとして、体内の石油の匂いがしたりするんじゃないかって、気になって。それでキャンドルというものを焚いてみたんですけど……」
 あ、それでアロマキャンドルを……。
「灯也……ちょっと私の匂い、嗅いでみてくれます?」
「ふぁっ!?」
  (中略)
「ど……どうですか? 灯也」
「……いい匂いがする」
 これは嘘でもなんでもない。
 本当に石油の匂いなんてこれっぽっちもしなくて――どちらかというと、甘い香水のような香りが漂っている。そういえば香料の一部は、石油を原料にしているって聞いたことがあるような。

石油豆知識もつくぞ! なんだこれ……。

ラブコメ部分は普通に甘くて可愛い。
ひょんなことから夫婦という立場になってしまった二人だけれど、主人公はせきゆちゃんをちゃんと可愛い女の子として見て愛しているし、せきゆちゃんも流れは唐突とはいえ主人公をしっかり愛している。
相思相愛の二人が上記のような石油ギャグを混ぜつつイチャイチャしたり仲良くしたりを繰り返す。可愛いんだなあ。

人間と油天使という立場の違いや種族の違いによって常識も異なる二人が、ちょっとずつ違いについて話したり一緒に過ごしたりしつつ絆を深めていくのが良い。ベタだけれども良いラブコメ。片方は油天使だけど。油天使ってなんだ……?

基本的に主人公以外のキャラクターたちがとにかくぶっとんでいて、銭ゲバで兼ねになるならだいたいなんでもオッケーで石油王の妹になりたい主人公の妹、外見アラブの石油王だが普通の留学生男子高校生のアブラダ、油大好きで自称オイラーのガソリンスタンドアルバイト女子高生と、どこをどう並べてもキャラが濃ゆい。濃ゆすぎるわ。

一応途中で三角関係になる?四角関係?なんだけど、主人公はせきゆちゃんしか見えてないこともあり不安感がなく、他の連中が勝手に横恋慕しているだけというのも安心感がすごい。
主人公とヒロインが一対一の安心感よ。

ラストもかなり好き。
主人公らは、せきゆちゃんのおかげで手に入れた豪邸も、仲間たちも、それ以外の何もかも失うことがない。
こういう話って正直『せきゆちゃんは最後の最後でただの人間になり、主人公たちは豪邸は手放してもとの小さなアパートへ戻る。けれども愛する人はいるし、仲間たちはいるから幸せ!』みたいな人間関係重視かつ得たものはあるが手放すものもある的なラストになりがちなんだけど、そうじゃなくて全取り。
せきゆちゃんは油天使のままで口から石油をぴゅうっぴゅ出すからこの先もずーっと一緒のまま。なんだこの安心感は。この先も絶対大丈夫だと思える感覚は。

落ちも含めて本当におもしろ……面白いんだけどこれ作者正気? 読んでると次第にヒロインがことあるごとに石油をぴゅっぴゅと吹き出したり油を利用したうまいギャグ言ってんじゃねーよっていうのも普通になってきたりするんだけどこれ正気? 正気か!?

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