「悪役令嬢としてヒロインと婚約者をくっつけようと思うのですが、うまくいきません…。 (ビーズログ文庫アリス)」 枳莎
あらすじ
"超天然"な悪役令嬢の勘違いラブコメ!
前世で途中まで読んでいた恋愛小説の悪役令嬢・祀莉に転生したけれど――なんて素敵なことでしょう!
だって小説の続きが見られるんですもの!
続きを見るために、悪役令嬢としてヒロインと婚約者をくっつけてみせます!!
さぁ、私とは婚約破棄してください!
そう思っていたのですが、なぜか婚約者はヒロインとのチャンスを無駄にして私にばかり構ってきます。
しかもヒロインは気にしていない様子で……。
いったいどうなっているんですか――!?
天然というよりも勘違い女な主人公
勘違い女といえば、男側にはその気はないのに女側は自分がモテてるとか思い込んで迫ってくるアレというイメージがある。なのでこれは逆の意味での勘違い女。
主人公は、自分がいる世界が死ぬ前に読んでいた小説の世界だと気付いてからずっと、原作小説ヒロインと幼馴染である原作小説相手役がくっつくのを期待している。自分が読めなかった本の続きを読むのだとわくわくしながら二人を観察している。
しかし実際のところ幼馴染が好きなのは主人公であって原作ヒロインではない。なので、原作ヒロインとの関係性を気にしている主人公は完全なる勘違いをしまくり、二人は早くくっつかないかなあなんて頭お花畑で話している。
主人公が頭ふわふわすぎて、これ幼馴染可哀想だわ……と何度も思ってしまった。そこそこ好意を伝えているし、自分の好意も伝わっていると思ってそうなあたりがなおさらに。主人公に対してかなり独占欲を出していて周囲も理解しているから本当に。
幼馴染は、主人公が漫画が好きでも受け入れてくれる。周囲にいる人間がぱっと見で理解できるぐらいに主人公を好きだと態度で表している。主人公が作ったものではないとわかっていても、主人公からお弁当を渡されたい。主人公と一緒に出かけたらデートと言いはる。主人公がショッピングモールでいなくなったら、高校生だというのに必死で探し回る。眠ってしまった主人公を横抱きで持ち上げてバスからおろしてくれる。
これだけのことをしてくれているのに、主人公は幼馴染の恋に見向きもしない。どころか、自分が読んだ本が別の女とくっつくもの(と少なくとも現状は思っている)から、彼女とくっつけようとする。
勝手にそんな勘違いされてるなんて知ったらめちゃくちゃショックだろうなあ。
悪役令嬢の意味がない
それから、悪役令嬢である意味がない。
現代日本を舞台にした小説(作中作)で悪役令嬢ってなに? 一応お金持ちが存在する世界だけれど、そんなところでの悪役令嬢っていってもせいぜいたかが知れてない? そして悪役令嬢が何するかすらわかっていないのに適当に動いてもタイトルの悪役令嬢っていう言葉が完全に意味なくなってない? あと主人公がひたすら頭ふわふわすぎて読んでいてイライラする。
もうこれ悪役令嬢ってつける必要なくね? 悪役でもないし。好きな小説のモブキャラに転生しましたとか、好きな小説で推しキャラの婚約者に転生しましたとかそこら辺でよくない?
悪役令嬢転生モノって、個人的には「このさき破滅があるのがわかっている、なのでそれを避けるために動く」というのが面白いんじゃないのかな。
別に破滅も何も待っているわけでもないんだし、主人公の性格上ヒロインちゃんに悪役じみた発言も出来ないんだったら、もうそれって悪役令嬢と名乗る必要性自体が無いと思う。
悪役令嬢ではなくてもそういうカテゴリだからと言われても、うーん……。
小説の世界に転生ってどうなんだ
ところで、小説の世界に転生ってどうなんだろうね。
乙女ゲームの世界に転生はまだ理解が出来るというか、ゲームってやり方しだいで全然違うルートが発生するから別ルートとして悪役令嬢が生き残るというルートが存在するかもしれないって思える。VRMMOとかだとそもそもルートとかいうものが存在しないから、悪役令嬢(仮)が自由に生きても良いし、チートで無双したっていい。
でも小説って一本道じゃん。その一本道の世界で別ルートを辿ろうとしたら、その人がいるのはもう小説の世界じゃないんじゃないのかな。
この間読んだ『私はご都合主義な解決担当の王女である』はそのあたりかなり力技とはいえ解決策を出していたものの、これはそういう箇所もないので面白くない。
あと、この本に限らないんだけど(それこそ『私はご都合主義な~』もなんだけど)、ウェブ小説の文庫化・単行本化の一部が起承承承承承承承おわり!なのなんとかならないかなあ。
もともと文庫や単行本に収めるために書かれているわけではない以上しょうがないとはわかるんだけど、雑に言っちゃうと文庫で出すのを前提に作られた話しって70%ぐらいで大きめの一波乱が発生してそしてクライマックスへ~とかあるじゃん。一部のウェブ小説の単行本化ってそうじゃなく、だらだらと日常が続いていく。ギャルゲの日常ルートを延々が続く。それって承部分では面白いんだけど転では全然面白くないんだよなあと思ってしまった。
そういえば、前に読んだ『だから彼女はキューピッドになりたい』も転生して推しキャラの幼馴染になったから幸せになってもらうためにヒロインちゃんとくっつけるぜ!系だったけど、今読んでらどんな感想になるんだろう、。