「和桜国のレディ ~淑女は一日にしてならず~」和風ファンタジー版マイ・フェア・レディ
あらすじ
紫乃宮伯爵、貴方にふさわしいレディになりたい――!
桜の化身とされる女王が治める和桜国。
いろははその日が女王の観桜会と知らず、桜の枝を切ろうと騒ぎを起こして捕らえられてしまう。
罪を償う代わりに「女王に謁見できるようなレディ」となるよう告げられたいろはは、宮廷魔術師である強面の男・紫乃宮圭人の邸で淑女教育を受けることに。
まずは読み書きからいろはのレディへの一歩が始ま……る!?
うーん、自分的に処理にこまる話だな……。
まず前提として、「あんまり裕福な暮らしをしていない少女が、とある善意の人によって次第に淑女となっていく物語」は結構好きなんだよね。変化が大きい物語は好き。マイ・フェア・レディみたいなって言われるけどマイ・フェア・レディは見たことがないのでわからない。
ただ、この場合の最大条件として、保護者であるとある善意の人は恋愛対象にならないというのがあって、これがもろにそこにひっかかってしまう。レーベル的にもしょうがないだろとは思うんだけど、そこにとにかくうーん……となってしまった。
物語的にはおそらく大正時代+ファンタジーで和風マイ・フェア・レディとでも表現すればいいのかな。マイ・フェア・レディ見たこと無いけど。紫の上計画……とはまた違うか。
主人公である貧民街出身の少女がひょんな流れから貴族の青年宅に預けられて淑女教育を受ける、という物語の設定や、礼儀などなにも知らない彼女が貴族の青年によって次第に貴族流の楽しいことを覚えたり、様々な反物を見て目を輝かせたりっていうのがめっちゃ好き。
今まで知らなかったことを知るのが楽しい、教育など受けたことがなく文字すら知らない少女が、文字を知り、自分の興味の方向性を理解し、最終的には自分が学びたいことを見つけるっていうのはめっちゃいい。
貴族の青年の仕事道具を憧れから勝手に触ってしまって怒られるかと思いきや、そこにいた真希子様がうまく取り直して、更には主人公に仕事を頼む流れがまたいいんだな。真希子様は貴族青年が言うとおり、言動がちょっとアレめだけど中身がものすごく常識人で、他人の感情を読むのに長けていて場の空気も読めるすごい人だよ。読んでて彼女の日常サブストーリーが読みたいと思ったぐらい好き。
そこから主人公がポプリ作りに興味を持ち、女王の後ろ盾がありつつもでかい店を開いて切り盛りするようになる(なったか?)という流れも自立としてよかった。
時々挟まれる主人公の日記抜粋がいい味出してる。
最初のうちはひらがなしか書けず語彙もほとんどなかった日記が、次第に漢字が増えだし、語彙も増えていく。読んでて成長を如実に感じた。こういうの! こういうのが好きなんだよ!!
何も知らない子が運命の偶然で他人の手が入ったことによって教育の機会を得て大きく変化する物語っていうのが好き。
ただ、だからこそ貴族青年との関係が最後両思いの恋愛になっちゃったのがうーん……。貴族青年は最後まで保護者でいてほしかった。
主人公側が自分を庇護してくれる相手へ憧れにも似た恋愛感情を持つとかならまだいいんだけど、貴族青年側は保護者であるし、年齢差もあるし、女王が切ないのもあるしでうーん……。
圭人の年齢が二十代後半で、いろはが十代半ばということもあるだろうが、
と明記されているので、年齢差が絶対に10歳以上あるんだよね。なんなら出会った頃は主人公は14だし。
なんか自分が年を食うに従って、片方が10代で年齢差の大きいカップル物が、判断能力のない若い子を食い物にしているようにしか見えなくなってきているのが良くない。これが若い方もせめて20代ならまだ判断能力ついてるからねと思えるんだけどね。同じ理由で教師と生徒物も相当きつくなってきた。
いや、でもこれ時代的には大正時代っぽいし……どうでもいいけどなんで大正時代ってあんな短いのにいろんなものの題材になりやすいんだろうな。
恋愛関係でついでにいうと、主人公も貴族青年も、どちらも互い以外に思いを寄せてくれている相手がいるんだよね。特に貴族青年。
女王陛下が主人公を貴族青年に預けたのって、恐らくは毎回報告させるために自分のところへ貴族青年を来させ、少しでも接点を持つためじゃん。完全に鳶に油揚げをさらわれたな……。
主人公側にも気の良い少年と女装少年というバラエティ豊かな2人がいるのにも関わらずすごくあっさり終わっちゃった。終盤駆け足すぎるというか雑すぎるというか手早すぎるというか話をさっさと畳もうとしたんだろうなというか、恋愛関係の畳み方がものすごく気になった。
気になったといえば世界観もで、そのあたりは本当にしっくりこなかったとしか言いようがない。
これはだいたいどんな国でも自分の国のトップについては存在とかどういうものとかぐらいは知ってるんじゃないかなーと思っているからなんだけど。
本当に恋愛周りさえなければかなり好きな話なんだけど、恋愛関係がどうしてもだめで、それが物語の終盤の芯なのでどーしようもねえ……自分の中で処理にこまる話だった。