「俺と妹の血、つながってませんでした2 (ファンタジア文庫)村田 天」常識的な兄が、妹の恋愛感情を受け入れられるか

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俺と妹の血、つながってませんでした2 (ファンタジア文庫)村田 天

俺と妹の血、つながってませんでした2 (ファンタジア文庫)村田 天

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あらすじ

秘密を知ってしまった、夏。私は、妹から一歩先に踏み出す。

最近、妹の久留里の様子がおかしい。いつもベタベタしてくるのに、家族の危機でも、一緒に海に出かけても、変に大人しいのだ。だが、理由は簡単だった。知ってしまったのだ。俺達の血が、つながってないことを。

お、お、おもしれえ~~~~~~~~~!!!!
嘘つきリップは恋で崩れるを読んだあとに、おっ前に読んで面白かった俺と妹の血も同じ作者さんか~、なんかあったら読もっかな~と思ってたので読んだ、らめっっっちゃ面白かった。

1巻が、兄が妹とは血がつながってないと知ってしまって距離感をまともな兄妹にしようとしたけれどもブラコン妹にぐいぐい来られるお話。1巻読了後に、読書メーターに『でもこの様子だと知らなくとも最終的には恋愛感情になったんじゃないのかな。家族(血縁)は最終的に誰か別の相手を見つけてそちらに行ってしまうから離れてしまうという思考あたりにそういう匂いをすごく感じた。』って書いたけれどもそこから始まる2巻でめっっっっちゃ良かった。

相手を尊重するからこそなかなか言えない

くるりは戸籍謄本で知った事実をすぐに兄に言おうとするが、しかし両親の喧嘩から始まった離婚騒動によりなかなか言える空気じゃない。両親の離婚騒ぎが収まったところで泣いている兄を見て、兄が家族というものを愛しているのを思い出して、兄と父の血がつながっていないというのをいきなり知らせるのは兄に対してひどいことをしようとしてるのではないかと考えて、今は一端言わないとする。

この選択出来るくるり、めっちゃすごいと思うんだよ。相手を尊重している。好きだからこそ、コウの大事なものを壊してしまう可能性を考えて、自分の利になる『血がつながってない』ということをなかなか言わないって選択できる。すげえ相手を愛してると思うんだよね、この行動自体。

2巻の冒頭で言われているとおり、くるりからコウへ向ける感情って、兄妹のときからほとんど恋愛感情に近いものだったけれども、兄妹という血がつながっている存在だからこそストッパーがかかっていた。でも血がつながっていないのならば問題ない。
伝える、もしくは相手がその事実を知ってるかどうかの確認って、くるりの恋を前に進めるにはすごく大きい部分なんだけれど、それでもコウのために言わない選択があるのに驚いた。お前めっちゃいいやつやんけ……。

これもうめっっちゃ久留理に勝算しかない!!

常識的な兄・コウは、くるりの恋愛感情自体を錯覚や自分を困らせるためのわがままだと認識する。けれども母からのアドバイスでちゃんと向き合い、くるり自身も散々疑ってそれでも好きだと自覚したと伝えるというラスト。

くるりも認識しているしコウも自覚しているとおり、コウは規範的な人間で、家族を狂信的なまでに愛している。そんなコウがくるりの恋愛感情を、返せないとはいえ受け入れられる変化をしたのがもうめっちゃ進歩!!
少なくとも1巻時点のくるりと血がつながってないと知ってしまったあたりだったら本当に絶対受け入れられなかったと思うんだよね。2巻で様々な出来事があり、またくるりとちゃんと話していないと自覚したこと、母からのアドバイスがあり、ちゃんとむきあって話し合えた。そしてくるりの恋愛感情を恋愛感情だと受け入れられた。同じ感情は返せないし恋はしていないとしても、錯覚や勘違いや何かしらの言い訳じみたあれこれで認知を歪めるのではなく、ちゃんと恋だって認識してくれた。

もうこの時点でめっっちゃ進歩だし勝算だよ! くるりの言うとおり、5年後10年後にはどうなってるかわからないよこんなの。人って変化するし、その変化の内容って様々だ。妹じゃないっていう目で見た結果、恋に落ちるかもしれない。ブラコンだった兄妹が、兄が最初に妹から距離をおいて、妹が密着は照れるようになったように。
あまりに最高のエンドすぎて笑っちゃった。最高。くるりの恋愛感情を恋愛感情って受け入れた時点でもうくるりに勝算しかないんだよ。

しかも、くるりは知らないけれど、読者はコウがくるりの水着姿や浴衣姿に即座に「可愛い」と言えなかった事実を知っている。今までとは変わってしまったコウを知っている。もう勝算しかないわ。絶対勝つ。勝ってくれ。

「妹をやめる」っていう宣言がここまで爽やかなまでに輝いているの初めて見た。
一緒に住んでいる女の子として意識してもらいながら、兄妹としての距離感も利用するし、好きになってもらえるように頑張るね!ってこんな清々しく言う!?

正直、1巻の最後だとこれもうやべえな~~と思ってた。ヤンデレ化かな、血がつながってないのを盾にグイグイ行って困らせて家族めちゃくちゃにするパターンかなって。でもくるりは家族を愛していたし、兄も愛してた。兄が家族を愛してるってわかってるからこそすぐには言わないという選択をする。
なんか、1巻読んだあとに思ってたことすべてについてゴメン……という気分。本当にめっちゃ良かった。

物語って対立とか葛藤とか変化とかなんだかんだ必要とか言われてるじゃん。これ読んで、あ~こういうことか、てすごく思った気がする。
くるりとしてはコウに恋を受け入れてほしいが、コウは常識にとらわれているのでくるりの恋愛感情の存在自体受け入れられない。その兄が、悩んだ末にくるりの感情が恋愛感情であると受け止める。
二人の恋愛の間に立ちはだかる問題は片方が告白すれば済むものじゃなくて、コウのなかに築き上げられた常識とか規範的なものであってなかなか崩れない。けれどもコウは一度変化したのだから、今後変わるかもしれないっていう期待がある。読者もこの先を想像してワクワクできる。
えーめっちゃおもしろ。すげー面白い。面白いってこういうことか。

俺と妹の血、つながってませんでした2 (ファンタジア文庫)村田 天

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