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「はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。 (ファンタジア文庫)服部 大河」めちゃくちゃ熱くて面白くて満足度高い単巻モノ

はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。 (ファンタジア文庫)服部 大河

はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。 (ファンタジア文庫)服部 大河

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あらすじ

世界を救う方法は――“主人公”を演じること。

第36回ファンタジア大賞《金賞》&《細音啓特別賞》W受賞!!

『主人公的行動』――例えば、困っている人を助けたり、窓際の席で転校生と出会ったり。そんな行動を力に変える兵器・スターゲイザーは、まさに小日向茜のための兵器……だった。
「おまえは小日向茜の代わりに、戦わねばならない」
茜が命と引き換えに世界を救ってから一年。一人残され、絶望の中引きこもる幼馴染・高橋嗣道に、それは突然告げられた。
茜を殺した仇敵の復活。迫る人類の危機。対抗できるのは、茜からスターゲイザーの後継者に設定されていた嗣道だけ。
「だから、天才科学者の私がお前を主人公にしてやる!」
突如現れた少女・山田麒麟による、《主人公化計画》が始動!?

お、面白かったー!
本当にありきたりなんだけど人間って誰しも自身の人生の主人公だし、誰かの人生のヒーローだよね。友情とロボ戦と恋愛と憧れとその他諸々詰まりまくってて面白かった! 
しかも冒頭読んだあたりでこれ目的であるボス戦まで最低5巻は続くしなんならその後もボスラッシュだろと思いきや、普通に1巻完結してまじかよの気持ちしかない。新人賞受賞モノか。なら納得。1巻完結、大好き

主人公の喪失と、新たなる主人公の物語

目の前で世界を救うヒーローだった幼馴染の少女・茜を亡くし引きこもっていた主人公・嗣道のもとに、茜が乗っていた機体はお前が後継者設定されているからお前が乗って世界を救え! と研究者・山田麒麟がやってくることから始まる物語。

その機体は主人公的な行動をするたびにトロフィー獲得能力開放みたいなヘンテコシステムが搭載されており、麒麟に引っ張られてあっちこっちと主人公的な行動をさせられることに! という軽いギャグみたいなシュール設定と、幼馴染少女を亡くしてしまった主人公のトラウマや、同じような立場だった友人たちとのぶつかりや葛藤含めてどれも面白かった。

この主人公的行動で能力を開放させるシステムが面白い。
開放される能力自体は何が出てくるか不明。おそらく危機的状況だったり危険な場合のほうが、出てくる能力が高いのかな? 明言はされてないけれど、でも、ここぞというときに誰かを庇って負傷みたいな主人公的行動をして出てきたのが肉体バフ系みたいな絶妙にしょぼいのだったら悲しいのでそうであってほしい。
肉体バフ、機体に軽いバフ、武器やバリアなどの召喚など複数種類ある能力を、どのタイミングでどれが開放されるかわからないのが読んでて楽しい。作中で意図的に主人公的行動を引き起こして能力追加してるのも、微妙にシステムの穴ついてるみたいで笑った。

強制的に機体に乗せられる主人公・嗣道は、茜の死により引きこもっていたしヘタレだし弱気だし主人公になんてなれない! と思っていたタイプだが、麒麟に強制的に引きずり回されるうちに、戦う決意をし、友達とぶつかり合い、恋の再認識をし、茜のいない世界を茜が守ったから自分も守ると決めるまでの流れがどれも熱くてすごい良い。そうだよ、こういうのだよ。こういう熱いのを俺は求めていたんだよ……。
前半、中盤、終盤、全てに熱いポイントがしっかりあるのもすごく読んでてアガる。というか終盤は熱い展開が続きまくってサイコーサイコーサイコー。

茜のいない世界でどうしてみんなやってけてるんだっていう嗣道の叫びが、重たいしわかる。
大事だったあの子は死んでしまった。世界はそれでも前に向かってるかもしれないが、茜がいなくても世界が回るというのを示されているようで嗣道にとっては辛い。だからこそ、嗣道は時間を止めて部屋に引きこもっていた。茜のいない世界を否定し続けてきた。そうやって喪った人を思い続けないとやってけないっていうのも、そりゃああるよなーーーー。

誰もがお前の人生の主人公、もとい土門お前主人公だろ!!

土門! 土門お前お前お前お前~~~~~~~~~!!!! お前が! もう! 主人公だろ!!!

茜亡きあと! この先に起きることを予想して怪獣使いとなり、嗣道の最後の一手となる可能性がある主人公的行動として『裏切った元親友を殺す』を使わせるために陰で暗躍する! お前が! 主人公だよ!
実際土門のこの行動って、もしものときは自分を犠牲にして世界や友人を救おうとするものじゃないですか。つまりは茜が最後に使用した自爆技とやってること自体は同じなんだよ。こいつだって! 主人公なんだよ!

というか! 飄々としていて情に厚く、友達のために全力を尽くせるが、普段はどこか底の見えない男が! 主人公なわけ――いや、そのポジションはかなり主人公よりも主人公のそばにいる人気投票2位ぐらいの男だな、主人公じゃないな。カプ人気で言えば攻め人気が高そう。こいつ×作中主人公がpixivに多そう。自己犠牲的行動をしたタイミングで受け人気一気に増えそう。

土門視点でこの物語を読めば、それはまた土門が主人公にしか見えないものになると思うんですよ。今作自体は嗣道が主人公として存在しているものの、土門視点ならば修行から決意から親友に銃を渡すまで全てが一本の物語。
誰もが本人の人生のなかでは主人公であり、主人公的行動から逃れられないのかもしれない。そもそも主人公的行動って何なんだろうな。

主人公やヒーローと言えば、麒麟からしたら、あのとき助けてくれた嗣道こそがヒーローなのに、実際のところ嗣道の視界には麒麟が全く入っていないっていうのがさーーーーー嗣道は麒麟のヒーローなのに嗣道の視界には茜しかいない……。
生きてる自分がヒロインになってやる! っていう麒麟の宣戦布告は熱くて強いし、この先の彼女の奮闘も見たい。
ところでわたしは麒麟=茜じゃないかなって疑ってたんだけど、違って良かった。茜の亡霊かなにかが嗣道を奮闘させるためにどうにかして出てきたんじゃないかって。かなり最後のほうまで疑い続けていました。


本当にすごく面白かった! 熱くなったし、最後の最後でスターゲイザーのなかで茜が現れたシーンは泣きそうになった。
しかし、内容的に1巻できれいに完結しちゃってるけれど、この先続刊という形になるのかな。だったら蛇足の可能性もあるが……どうなんだろう……。

はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。 (ファンタジア文庫)服部 大河

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