
あらすじ
天才コンサルと挑む、ビジネス頭脳バトル!
『“ビジネス”は世界を描き替えるツールだ』
ワールドビジネス育英財団ーー通称WBFには、己が理想の“世界”を作り上げるべく、若き天才経営者が集まる。
「ねっ、“友達”いりませんか?」
環 伊那ーー金髪、巨乳、明るい笑顔が特徴の経営初心者。WBFに参加するため高校を中退した元JKがパートナーに選んだのは、<成功請負人>の名を持つ天才コンサルタント真琴 成。
「アンタに、本当の“ビジネス”ってヤツを教えてやるよ」
天才たちの集う戦いで、経営初心者の彼女を勝たせる唯一の方法は、“友達”を売ること!?
最初はお勉強系ラノベかと思ってたんだけど、途中からキャラクターそれぞれの信念がぶつかり合う人間ドラマが最高にアツくて、読んでて気持ち良かった! でもヒロインの事業計画がこの先大丈夫か不安すぎる。
お勉強ラノベかと思ったら、ヒロインによる人誑しラノベだった件
選ばれし若者だけがしてもらえる融資のためのバトロワに参加する主人公、その主人公が出会った選ばれてるとは思えないふわふわテンションのヒロイン。けれどもヒロインに光るところを見つけ、コンサルとして身を立てている主人公は彼女のコンサルティングをして融資バトロワに挑むお話。
善人っぽくはなさそうな雰囲気だった主人公が内にビジネスというものに対する熱い思いを秘めたる人間だったり、空気読めないちょいウザ系かなと思えたヒロインが実際のところかなりの人誑しなのがわかっていく流れが面白かった。
バトロワ参加者たちの価値を株式に見立てて戦うゲームっていう設定を聞いて、正直剣と魔法の税金対策的なお勉強ラノベなのかと思ってた。
「でもミー、会社作る時にだれにも株買ってもらってないよ? 株主さんがいないと株式会社にはならないんじゃ?」
「それはアンタの会社が、株主=経営者の一人企業だからだ。最初に1円出したって言ってたろ? あれはつまり『環が環の会社の株を1円で買った』ってコトとほぼイコールだ」
「あ、なるほど! 1円ってそのお金だったんだ!」
「ちなみに会社設立時に株を売り出して得た初期資金のことを『資本金』という。厳密には全部を資本金にするとも限らねーんだが、アンタの場合はその理解で十分だ」
「わかった! じゃー、ミーの会社はいま1円持ってるんだね! ……え、1円しか持ってないのかい!?」
「だから木っ端だってずっと言ってんだろ」
というか、これから始まるとそういう認識もする。
剣と魔法の税金対策が、税金お勉強ラノベが本質であってラブコメ部分がおまけだなーという認識をしながら読んじゃたので、これもその系統かなー、お勉強メインで物語自体はおもんないタイプかなーと思いながら読んでた。
でも、全然違った。経済や株式の説明は、あくまでこの世界のルールを説明するためだけ。物語のメインは、がっつりキャラクターたちの人間関係とその変化に割かれてて、これがもうものすごく良かった。
全員が「信念」持ちだから、行動に納得できる
この話の何が良いって、登場人物みんなが自分の中に譲れない「信念」を持ってるところ。
主人公は「ビジネスが好きだから、他人にも楽しくやってほしい」っていう信念があるからコンサルをやってる。だからこそ楽しくビジネスをしたい・みんなをハッピーなビジネスをしたいという思いがあるヒロインが叩きのめされたときに、全力で相手を叩き潰す方向に行くのが 「わかる~~~!!」 ってなった。
自分の好きなものが潰されそうになったからこそ、全力で反撃を行う。ヒロインがいいやつで友達だから助けてやりたいというのもあるだろうが、ヒロインの経営への理念に同意しているからこそ、それを邪魔することは主人公を邪魔することにもつながる。
こういうキャラクターの行動と感情がちゃんと繋がってる話、わたしは大好き。
ついでにいえば、追い詰められた上で起死回生の一手をぶちかます話は気持ち良い。
そうやって叩き潰そうとしたときにヒロインが「みんなハッピーに!」とか言い出すから、うわ、出たよ理想論だけ振りかざすうぜぇ聖女様キャラか? と身構えたんだけど、ちゃんとその甘さが物語のキーになってるし、作戦立案は主人公だとしてもその作戦を実行するのはヒロインの人たらしな能力部分でなのがすごく良かった。
ていうか、悪役ですら自分の信念を貫いてて、めちゃくちゃ格好良かった! 信念があるから戦うし、信念があるから救いの手を払いのけるし、信念があるから最後は自ら身を引く。こういうキャラは好きにならずにはいられない。
というわけで、主人公もヒロインも根っからの善人だしそれぞれの理念があり、読後感がめちゃくちゃ爽やかで気持ちいい一冊でした。
ただ、一つだけ言いたいんだけど、ヒロインの事業、結局どうやって島を良くするのか全然わからんのだが!? でも一応人誑しっぷりでお金は集まったしどうにかなる……なるのかな……どういう行動で良くしていくのかがまるでわからねえと不安なんだが……。
けどそこらへんもコンサルたる主人公がどうにかしてくれるでしょう! と思える話だった。
