飼い犬に咬まれました (角川ルビー文庫) 李丘 那岐

★★★☆☆,角川ルビー文庫ヤクザ,恋愛,片思い,現代,男同士の強感情,裏社会

あらすじ

背は低いが態度はデカい金貸しの宗太は、天敵のヤクザに捕まったところをヤクザの手下・志賀に助けられた。
「お兄さん、うちに転職しない?」。
宗太の一言を本気にし、極道から足を洗って事務所の用心棒として働きだした志賀。
無愛想で何事にも無関心な男だが、何故か宗太にだけは興味を示し「稼いだ金であんたを買いたい」と言い出す始末。
全力で拒否しつつも、身命を賭して宗太を護る志賀の忠誠心と一途な想いに絆されそうになり…?

忠犬×オクテな金貸しの下剋上ラブチェイス!

こんな人におすすめ

  • 忠犬×飼い主が読みたい人
  • 他人になつかない犬が自分にだけなつく話が読みたい人

元ヤクザ×金貸し兼厄介事引受屋

金貸し兼便利屋の主人公は、ある日便利屋の仕事としてヤクザの事務所から、依頼人の写真を取り返すことを依頼される。
無人のヤクザの事務所に潜り込んだものの、予想外のヤクザの帰還に発見される主人公。
そこまで腕っぷしが立つわけではない主人公は危機的状況に陥る。
だが、ともに便利屋を営む友人たちが警察を連れてきてくれたために、最悪の状況は免れた。
その際に若干助けてくれ、なおかつ主人公が探している写真が仕舞われている金庫の鍵の在り処を教えてくれた男に、出所したら自分のところへ来いと主人公は声をかけた。
一年後、出所したその男が主人公の元に現れた――というお話。

Book☆Walkerの読み放題ってBLも入ってんのか、と見つけたので読んでみた一冊。
電子書籍でも紙の書籍でも読んでる最中にいきなり挿絵が発生すると慌てるので(特に致しているシーンがあるタイプの本はよりにもよってそこを挿絵にするので)、まとめて後ろのページにいれといてくれるルビー文庫は電車内人権的にとてもありがたい。

主人公いい性格してんなあ!

この話、主人公がとっても良い性格をしている。
闇金ではなく登録している、低金利金貸しの主人公。
困った人には金を貸してくれるが、しかし一筋縄ではいかない。

例えば潰れかけの古着屋の店主が金を貸してくれと言い出したときには、店にぽつんとあったセーラー服を押し付けて「これを着て1週間客引きができたら貸してやる」などという。
その人が絶対にやりたくないと思う出来事を的確に見極めて押し付けてくるのだ。

いやーおっさんがセーラー服着て客引きとかすげー辛いっしょ。
しかも店主の売りたいのはセーラー服(中古・使用済み)ではなく、店の奥のほうにあるわざわざ買い付けてきた古着。
七十万のビンテージものを売りたいおっさんが、セーラー服を着て客引きさせられる。
屈辱だし店舗カラー的に絶対やりたくないだろうしとにかく最悪だろ、これ。

とはいえこれは、金を借りる人がどれだけ金を借りることに対して覚悟があるか見ておきたいという主人公の試練だ。
このぐらいクリアできず甘っちょろい心で闇金ではない低金利で金など借りられるかという思いがある。
とはいえ単純に性格が悪いというのもあるけど。
これが前半だけだったらただの良い人だし、後半だけだったら完全に性格が悪い人w。
そのどちらもあって、男気があって、金があって、懐も広く、性格は若干悪く、どんなときでも笑えというのが信条という主人公が魅力的だった。

他人になつかない犬が主人公にだけなつくさまを眺める楽しさ

冒頭のあらすじにあるとおり、主人公が出所後面倒を見るようになった元ヤクザ者の男が今作の攻め。
元々は組長の息子の右腕だったが、仕えている組長息子からは有能さ故に疎んじられ、本人も組長息子をあまり快く思っていなかった。
組長息子の性格的におそらくお礼参りに訪れるはず、対抗策として自分をそばにおいてくれと言い出し、ついでにヤクザからの足抜けをするために主人公から一千万の借金をする。

幼い頃に両親が死にヤクザの組長に育てられているせいで、あまり感情の動きがなく、なおかつ組長からは信頼されているものの、組長息子からは邪険にされていた。
幼い頃から組長息子より虐められていたために、現在あまり感情など見せず、ほぼ笑わないような男となっている。

そんな彼に主人公が一千万貸す対価として出したのが「笑え」というものなのが面白い。
これもかんたんなお題で主人公人が良い~~~というわけではなく、この男がどう頑張っても普通に笑うことができないからのセレクトなんだよね。性格が悪い。

笑うことすら満足にできない、顔面怖いので怯えられる、人馴れしていない犬のような男。
その癖、主人公に興味を持ったからとくっついてきて、主人公の命令ならばなんでもきく男。
なんなら、古着屋の店主がセーラー服を着るのと一緒にブラウス着てスカート穿いてろという無茶苦茶なものすら聞く男。
そんな相手が、初めてヤクザ以外で自分に声をかけてくれた相手である主人公に対して近づき、好意を持ち、恋になる流れが面白かった。

あとこれは単純に好みの話だけれども、似合わない女装が大好きなので、古着屋のおっさんの女装といい攻めの女装といいとても良かった。最高だった。この部分でポイントがバク上がりした。

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