絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J) まほろ勇太

★★★★☆,MF文庫J学園,恋愛,新人賞,片思い,生徒会長,脱陰キャ

あらすじ

恋愛必勝の女神は実在する――!? 優秀賞受賞作!

この学園には必勝の女神がいる――。

白星絵馬の手のひらに願い事を書くと叶う、そんなジンクスといつも笑顔な人柄で学園でも人気のクラスの太陽・絵馬を尻目に、目立たず冴えない自称幽霊の大地は生徒会室へ。
憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務のためだ。

が、ある日、大地が偶然絵馬の「とある秘密」に触れたことで、絵馬が大地の恋愛を全力応援すると宣言!
さらに絵馬を信奉する学園トップ美少女の猪熊みりあと鷹見エレナまで巻き込んで大地のモテ改革を開始!!
大地の学園生活は瞬く間に一変していき――!?

第13回新人賞<優秀賞>の正統派青春ラブコメ、爽快に登場!

こんな人におすすめ

  • 脱陰キャモノが好きな人
  • 好きな人に対して一直線、他の人に目移りしない主人公が好きな人

脱陰キャガイド

ひょんな出来事で自分にお礼をしてくれると言いだした優しくて他人のために頑張ってくれる女神様みたいな女の子に協力してもらって、憧れの先輩(好きな相手がいるのがわかってる、でも好き)に告白できるように頑張ろう!という話。

弱キャラ友崎くんが代表する、脱ヲタというか脱モサというか、陰キャから脱出しよう的ラノベである。
ただ読んでいて物珍しいと思ったのは、主人公になされるアドバイスの圧の強さ。

例えば、主人公はモサい。ダサい。オタクっぽくない服を着てこいと指定されたのにダメ出しをされるぐらいにダメ。
その点について、女神様みたいな女の子のセコムとしか表現しようがない幼馴染ははっきりとこうアドバイスする。

「つまりあたしが言いたいのはね、自分のキャラと世界観を客観的に判断すること。そしてそれに『似合う』服を選ぶことよ。一つアドバイスをするとね、ダメ丸が普段参考にすべきは男性モデルのファッションじゃなくて『お笑い芸人のファッション』よ。逆にスタイルの良いモデルなんか真似したらひどい目に遭うわ」

そして行われるのは、服の選び方教室だ。
主人公の体型に合う服の探し方から始まり、一着似合う柄チェックシャツを見つけたらそこのブランドの服をマネキン購入しろという。
ブランドごとに想定している人間の体型も違う。よって、シャツの身頃や着丈は違う。
つまり、自分に似合うシャツが1着あるブランドならば、他の服も自分の体に合う形状の可能性が高い。
自分がどんな服を着れば良いのかわからないならば、同じブランドをどんどんマネキン買いしていけばいい。

このあたりはわかりやすくて面白いし、結構いろんな脱オタクファッションガイド系統の本にも書いてある。
ただ、この本はこれだけじゃ終わらない。

人間は自分のことを話すのが好きだから、相手に質問を投げかけて気持ちよく自分のことを話してもらえば、それが相手にとって『楽しい会話』となる。
相手の暇な時間を見極めろ。自分なんかと話すぐらいしかすることのない時間を見極めて、ラインや通話を仕掛けろ。暇な時間を見極めるためにはまずストーカーし話しかけ情報を集めろ。
生き物のメスは生物学的に子孫を残せる相手に惹かれる。つまりはただ強いだとか体が大きいではなくヒエラルキーの高いもの。クラス内カーストが高ければイケメンでなくてもモテる。
余裕があるほうが一途より良い。好きな相手が一途でいてくれるのは嬉しいが、好きでもない相手が自分に一途なのはむしろ怖い。

トバしてんなあ!
理屈と軟膏はどこにでもつけられるというけれど、出てくるアドバイスはどれも理屈っぽい。
新興宗教にホイホイ行くような人ならばかんたんに引っ張られるような内容ばかりだ。つまりは私がホイホイいきそうな内容ばかりだった。ハイ。私はカルト宗教にホイホイ行きそうな人種。

揺らがない主人公って格好いい

主人公に優しい女神様はとても可愛い。
ぱっと見た瞬間にきらきらしているような美少女で、特徴的なのは恒星のような瞳。
誰にでも分け隔てなく優しいし、陰キャな主人公の悩み事も親身になって聞いてくれる。

彼女の幼馴染であり、彼女のセコム的存在の二人もとても可愛い。

一人は現在モデルをやっている少女。モデルをしてるぐらいだから当然可愛い。
男嫌いで女神様のこととなるとすぐキレて大噴火するような性格だし女神様に近づく男にハサミを持って斬りかかるような暴力的なところはあるものの、女神様のことをとても大事に思っている。
女神様に相談されたからとはいえ、身だしなみをどうしたらいいのかわからない主人公に真剣に付き合い、今後のことを考えた服の選び方を教えてくれる。

もうひとりは、少女小説家のドS少女。ミスコンではモデル少女を押しのけ一位になるぐらいに可愛い。
可愛いというよりも美人系か、ドSな性格と相まってきつさとともに美人さを増している。
書いている小説ではテンポよく面白い会話が評価されているという通り、まともな会話やコミュニケーションは若干不安だが、主人公に好きな相手との会話について的確なアドバイスをしてくれる。

ついでに言えば、主人公の現在住んでいる寮にはだらしないが会話が気楽な寮母さんがいてくれる。
主人公が年収二千万になったら結婚してやるよーなどと現実味のない発言をするものの、誰よりも気兼ねせず会話することが出来る。

そんな可愛い子たちがラッキースケベ含むアクシデントを起こしてくれるけれど、主人公は最初から最後まで揺らぐこと無く、好きな相手である生徒会長一筋だ。
これがすげーーーーー良い!

虫を取るために服に手を突っ込んじゃうだとか、抱きしめられて胸に顔を突っ込んじゃうだとか、まあしょうもねえラッキースケベは大量に発生する。相手はたいてい女神様で、相手の可愛さにドキッとする。
でも主人公が好きな相手は生徒会長だけなんだ。
いくらラッキースケベがあろうとも、お前はどうせ相手が顔が可愛いからヤりたいだけなんだろ?と揺さぶられようとも、それでも好きな相手は生徒会長だけなんだ。

主人公の陰キャ脱出という行動理由は全て生徒会長に好きになってほしいがため、会話を面白くなりたいのも生徒会長とお喋りしたいからと、一本心が通っててあーーーーもう最高。とても良い。
キャラの立ち位置だけ見ればハーレムになりかねない状況ではあるんだけど、それでも主人公が『でも僕にはあの人がいる』と何度も思って思考修正するのが良い。
好きな相手に一途になれるのって、やっぱり良い。
生徒会長に告白するタイミングもこれ以上なく格好良かったよ。

とはいえ、ラスト的に女神様と生徒会長のどっちにも取り合われるパターンになるのかな?
このままだと生徒会長から女神様に乗り換えそうな雰囲気もあるし、若干不穏。
主人公の格好いいところが一途な点だから、できれば生徒会長一筋になってほしいんだけど。

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