お兄ちゃん……ここでなら、好きって言ってもいいんだよね? 第三世界の兄妹神話 (MF文庫J) ツカサ

★★★☆☆,MF文庫Jネトゲ,ファンタジー,兄妹,家族,恋愛

あらすじ

異世界(こっち)でも、妹の面倒をみることになりました。

「うえーん! お兄ちゃーん!」

俺はなぜか異世界でも妹の面倒をみることになった。
二人でよく遊んだフルダイブゲーム『カオティック・フレイム』に似たこの異世界で。

二週間前に失踪した妹、ルリからのメール。指示に従いゲーム内でイベントをこなすと気づけばゲームと同様の異世界へと辿り着いていた! さらにそこには本物のルリがいた!? けれどこの世界では、ルリは過酷な運命を背負わされているようで……。仕方ない、可愛い妹のためにお兄ちゃんが頑張るか。ここならゲーム時代のチートも使えるようだしな。

「ここがあたしとお兄ちゃんの愛の巣だよ! ここで思いっきりいちゃいちゃしようね!」

可愛い妹のために兄が陰ながら頑張る兄妹ファンタジー!

こんな人におすすめ

  • デレを必死でツンで隠そうとしているものの、全く隠せておらず完全にデレばかりの妹が見たい人
  • そんな妹にも関わらず、兄がほぼ全く妹を恋愛対象として見ていないというカオス状況を見たい人
  • 恋愛的な意味ではなく、家族的な意味で愛し合っている兄妹が見たい人

妹はとっても(恋愛的な意味で?)兄が好き!でも兄は妹を(家族的な意味で)大好き!な謎すれ違い

なんつーか、すごくどっちつかずな話だった。

両親が離婚したものの、ネトゲの世界でずっと顔を合わせていた兄妹。
しかし、兄が起こしたバグにより、妹のアバターは失われてしまう。また、仲直りの機会もあったのに偶発的な事故で失敗した二人。
そんな中、妹が家出という一方が兄の元へ届く。
妹を心配しつつネトゲ世界で妹のアバター復活のためにバグを探していた兄だが、ネトゲ中の彼の元に妹の名を使う手紙が届く。
書かれている内容を実行したところ、突然ネトゲ世界のような別の世界に飛ばされ、そこで妹は勇者として戦っていると言われて――という物語。

この話、妹がとにかく兄を大好き。
ネトゲの中で兄と結婚するし、幼少期にも兄と結婚すると言い切ってるし、なんなら物語の最後ではウエディングドレス姿で兄を待っている。
この結婚関連のあれこれからしておそらく恋愛的に好きなんだろうなと思う。

なのに、兄のほうは家族としては妹がすきだけど、恋愛的な意味ではさっぱりなんだよね。
ネトゲでの結婚も便利だから、幼少期の結婚したい発言も華麗に流し、ラストのウエディングドレスもびっくりするぐらい。
ただ、妹を何よりも大事にしている。それこそ自分が元の世界に戻れなくなっても良いと思うぐらいに、家族として。

この感覚の差がなんだかなーというか、どっちつかずというか。

兄から妹の感情は、うまくいえないけどすごく『リアル』なんだよね。
少し年の離れた妹は大事だ。四歳の妹が窓から身を乗り出して落ちそうになったときに助けたエピソードがわかりやすくて、自分が目をかけてなきゃ死ぬかもしれない生き物として認識している。
とはいえ、構ってやりたくないときは放置するし、おやつをそう簡単に分けてやったりはしない。
親が離婚して会えなくなったら会いたいと思うし、最終的に自分を慕ってくれてずっと一緒にいたいと言ってくれる妹のためなら自分の世界を捨てたっていい。親父に置き手紙ぐらいは準備するけど。
この感覚って、ものすごく『リアル』だと思う。

対して妹の感覚もリアルと言えばリアル。
兄が大好きなのはわかる。兄妹として。
自分を気にしてくれて、なにかあったら助けてくれて、他の人からしたら普通の人かもしれないけど自分にとっては唯一で一番たよれる兄。
わかるんだ、そこまではわかるんだ。
でも、恋愛的に好きというのが全くわからない。

言い方はアレなんだけど、この本ってラノベじゃん。ラノベだからヒロインはそういうことやああいうことを主人公に仕掛けるのもよくあることで。しかも主人公の周囲に他の女の影があるならなおさらだ。
妹、そういうの一切ないんだよね。
主人公のそばに可愛い女の子(妹=勇者のパーティメンバーの獣人とエルフ)がいるが、彼女たちの耳をモフる権利は自分のもの!と主張はするものの、主人公自体に対する独占欲というものはさほどない。
本当に恋愛的に好きなの?と読んでいて不思議に思った。

なんかいっそ、これ恋愛で好きっぽさを表すウェディングドレスだのゲーム内の結婚だのそういう要素を取っ払って、タイトルの「ここでなら好きって言ってもいい」という部分も取っ払っちゃったほうが座りが良いんじゃないかと思った。
タイトルを見たときに、主人公が妹への劣情を抑え込んで好きと言わないでいる話かと思っていたのだけれど、そういう部分もまったくないんだよね。主人公から妹への感情が、どうしても兄妹の家族愛にしか見えなかった。

良い配置のヒロインたち

メインヒロインである妹のパーティメンバーの配置がうまいなと思った。

小動物系で主人公のことを恋愛的な意味で好き好き大好き!な獣人(協力者)と、ツンデレエルフ(裏あり)。
そして、主人公に対してツン気味という名目だがどう見てもデレの配分のほうが多い妹。

キャラたちの配置がうまくて、どれもこれもが可愛かった。
とはいえ、このままだと普通にヒロインが獣人娘になるようにしか見えなかった。

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