「僕らのセカイはフィクションで」オチと結論がちぐはぐなの以外は面白かった
あらすじ
自作小説のキャラが現実世界に? 作者の知識で理想のヒロインを守り抜け!
学園事件解決人・笹貫文士の高校生活は忙しい。学園内外のトラブルを引き受けながら、創作活動――Webで小説を連載する作家としても人気を博していた。
最新作『アポカリプス・メイデン』の評価は高く、有名イラストレーターがファンアートを描いてくれるほど。しかし今、文士の筆は止まっていた。この先の展開に詰まっていたのだ。
定期更新の締切が迫る中、学校からの帰り道でも、ヒロイン・いろはが活躍する山場のシーンに思考を巡らせる。ようやくイメージがまとまりそうになった瞬間──そのいろはが文士の目の前を駆け抜けて行くのだった──。
超常現象(ファンタジー)と現実(リアル)の境界を超えて、作者知識で無双せよ!? 謎が謎を呼ぶボーイ・ミーツ・ヒロインここに開幕!
前半は面白かったんだが、終盤になるにつれて自分が物語を理解できてないだろうな感がどんどん強くなってってた(メタとか作中作がものすごく苦手なので)。そんでもって最後の最後のオチがいやそうなっちゃう……?みたいなのだったのがうーん……。
主人公が魅力的だった
ちょっと出た情報から状況を推理して解決する安楽椅子探偵っぽいキャラが冒頭に描写されるので、うわこいつ格好いいーと思った
ホームズで育てられているので自力で動いて調べた上で、まるで超能力かなにかで調べたみたいにばーっとそれを喋りだすキャラクターに死ぬほど弱い。
自作のヒロインが現れる、というたまにあるパターンから一歩踏み込んだ物語
自作の登場人物が現れるという展開はたまによくあるけど、そう思っている主人公こそが作中の登場人物であり、その物語を書いているという設定で描かれているという一段回上のひねりが来るのが面白かった。
自分が書いた物語の登場人物だから技や能力がわかる→しかしそういうふうに作者が設定したのであって、実は彼自身が作者ではなくもうイチ段階上の作者がいる、という構造。
この構造自体、終盤に出てくる世界と世界の管理者がいてそれぞれ現状の世界を司っているという状況と同じだよね。SF苦手だからめっちゃ適当なこと言ってる。
中盤で主人公がヒロインに
「僕は……力になれないと思う」
「何?」
「僕の強みは推理力、問題解決能力だ。だけどそれらはすべて彼女の、いろはの頭の中から出てきたものだった。だったら、脚本のない現実で僕が役立てることはない。何かを思いつくにしたって、それは多分彼女も考えつくことだから。むしろ守る対象が増える分、君らの足手まといになるんじゃないか」
このあたりよく考えたら全然正しくないのが興味深い。
何故なら作者は時間を掛けてその解決方法を生み出すが、キャラクターはそれを一瞬で思いついたことにできるので、時間の短縮ができるんじゃないのかな。
キャラクターは作者より頭よくは描けないけど、思いつく速度が作者の何倍も早くできるやろ。
「一つ、気になることがあるんだけど」
しばらくして里緒が言った。歩みのペースを保ったまま、肩越しに振り返ってくる。
「君は学園事件解決人なんだよね? トラブルシューターとも名乗っているけれど、作中の肩書はその二つが大半だ。なのに作品タイトルは『文士探偵』になっている。なぜだい」
「さぁ」
肩をすくめる。
「大方、それじゃ語呂が悪かったんだろう。『作家』という属性と、僕の名前――文士をかけて肩書にする場合、文士学園事件解決人じゃ長すぎる。だから、シンプルな『探偵』って単語を持ってきたんじゃないか」
「タイトル詐欺だろう。このキーワードを持ってきた瞬間、読者は本格推理を期待するよ。でも君の小説は、そこまでトリックを重視しているわけじゃない。がっかりしないかな」
ここからはじまるキャラクターによる互いの物語に対しての文句つけ合戦笑ってしまった。
作中キャラにここまでダメだしされることある!?つらすぎる。
タイトルで見てもらえるかどうか決まる部分があるウェブ小説で、タイトル詐欺かつ見てもらえる人がそもそも少なさそうなタイトル。それの部分や設定の各所を自作のキャラから叩かれまくる。つらすぎる。
オチが微妙すぎる
ヒロイン=作者は自分の生きてきた日常を嫌っていた。だから自分の描いた物語の世界を現実になってくれと願い、そしてそんな夢物語が実現してしまった。
その世界は上位者によって破壊されるが、今なら物語の登場人物たちとともに他の世界に逃げ込んで、なおかつ設定を書き換えて都合の良いシステムにしてその世界で現実の人間として生きられる。
そうして生きていこうと甘言を吐く悪役と、正しい世界にしろと叫ぶ主人公。
「よく見ろ。君が本当に世界を呪っていたなら、全てに絶望していたなら、なぜ僕はこんなキャラクターになっている!? どうして君の小説で主人公達は負けなかった!? 分かりきった話だろう。いいか、まだ自覚できていないなら言ってやる。君は、宇宿彩葉は」
剣を振る。正面から飛んできた火矢を両断する。
「楽しい物語を求めていたんだ!」
声をからして叫んだ。
「辛い日常も灰色の学園生活も、どこかでひっくり返したいと思っていた。自分が誇れる自分になって、道を切り開きたいと思っていた。うちに秘めた希望と理想、それこそが君の創作の原動力だ、違うか!」
(中略)
「なんでもヒロインの思い通りになる、そんなお話がいいのか」
「え?」
「間違ったらすぐにやり直せる。気に入らない奴は指先一本で消し飛ばせる。そんな物語が書きたかったのか」
(中略)
「……確かに」
いろはは苦笑気味に肩をすくめた。
「そんな作品を書いてちゃ、作家志望失格ね」
そういう、自分の書いた物語のなかに逃げ込んではいけない、自分のたやすく改変させた世界にいてはいけない、どんなに辛くとも自分に誇れる自分になってひっくり返すべきだと。主人公の発言でそう思ったヒロインっ!!!
からの、主人公や敵(物語の登場人物たち)が生きている世界をうまいことシステムをずらして作り上げて、彼らを自分の世界に据え置きました~! っていやいやいやいや出した結論どうなってんだ。
しかもエピローグの描写が物語の冒頭=作中作と同じだから、主人公の環境自体は何も変わっていない。ということは、どっちかっていうとヒロイン=作者が作中に来たという形のほうが近くない?
わたしはメタ作品の読み解き解釈が苦手だから間違ってるかもだけど、出した結論では主人公側っぽいのにやってることは敵の結論側じゃない?
なんともそのあたりうーん……となってしまった話だった。