「三ツ星商事グルメ課のおいしい仕事」感情で仕事するのやめろ

★★★☆☆,メディアワークス文庫お仕事,料理,現代

三ツ星商事グルメ課のおいしい仕事

三ツ星商事グルメ課のおいしい仕事

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あらすじ

とある総合商社のお荷物部署・グループリソースメンテナンス課。毎夜、会社の経費でムダな食事を繰り返しているというウワサから、人はそこを「グルメ課」と呼ぶのだった。 入社1年目の新米経理部員・山崎ひなの。彼女はグルメ課の浪費実態を調査すべく、1ヶ月限定で異動を命じられるが、案の定そこは社会人らしからぬ人々の巣窟だった……。 一刻も早く課をつぶそうと、彼らの食事会に潜入するひなのだったが、そこには意外なミッションが隠されていて――。 個性豊かな実在の飲食店&メニューが悩める社員を救う。読めば読むほどに味の出る、熱くて美味しいお仕事ストーリー!

月に10万経費として飲食費を使う課に、経理課からスパイとして潜り込まされた主人公。そこでは食事を使って他人の悩みや問題を解決する人たちがいて……という物語なんだけれども、どうにも合わなかった。

結局のところ、それって会社の経費10万使ってすることですか? という物語としての根本的な部分があんまり決着ついてなくね? でもそもそも経理課の課長がグルメ課を潰したい理由もかなり彼の個人的感情に基づいてね? 最後の話もみんなの個人的感情の結果でしかなくね? というツッコミどころが満載のところが合わなかったのかも。

まず主人公が幼い。ケーキめっちゃ食ったので翌日寝坊して遅刻しました、相当やばい。しかもそういう遅刻が初めてじゃない。どう考えてもやべえ社員だろ。学生でももうちょい正気だぞ。

グルメ課の仕事って、やめそうな人を引き止めるためにその人のお悩みごとを解決したりカウンセリングを行うのがメインのお仕事。それのときに腹を割って話しやすいからという理由で業務時間外に食事をする。
でも別に食事じゃなくていいじゃん……とか、いい感じに飯に絡めてるだけじゃん……と思ってしまうんだよね。
このグルメ課をやろうと思いついたのが紙ナプキンでナポリタン食べた後の口を拭ったときについたキスマークだから料理関係、というのは感情ではわかるけれども論理ではわからない。そこで仕事のアイディアが思いついたのは偶然であって、その後も料理関係で貫いているのは験担ぎ程度の意味合いしか感じられない。
月間10万かけて有能な人を引き止められるならば、その後の費用対効果を考えれば安いもの。でも燻製の人はその音声聞かせたら燻製食べずとも理解してくれただろうし、 ビアバーの人だってわざわざビール飲まなくとも種明かしはできた。食事する意味があんまりないんだよな。

最後の話は本当に全然乗れないままにキャラクターだけが盛り上がっていて、読みながらうーん……という感情が強かった。
出てくる人間が全員感情論で、御社気に食わねえので取引へらすわ!(他人にマウントとりたいおっさん)、グルメ課は余計な金使ってるから潰すべき!(同期が気に食わないおっさん)、グルメ課は良い課なんです!潰さないで!(完全感情論)と、感情バトル過ぎた。本当に全員社会人?
取引相手の、奥さんや娘さんが言ってくれたから~というのもどうかと思うし、主人公がああだこうだ言ったぐらいで娘の交際相手に興味を示すような父親なら、もっと速く興味示してるだろ。取引相手に関しては、結局妻子には弱いのか妻子にも強く言う人なのかすらわからなかった。娘の結婚相手を勝手に決めようとしてるあたり強気に出る人かと思いきや、娘にあのピザ食べないとかもったいないと言われてちょい後悔してるっぽいし。
この取引相手、(三ツ星商事にとっては巨額とは言えないが一般的にそこそこデカい)金額を動かせるぐらいの権限を持っていながら、そんな完全感情論でやってて良いのか。

物語において悪い人はほんとうにいないんだよね。みんなどこからしら人間っぽさと愛嬌を持っていて、ただ愛嬌と身内の感情論と身内バトルのみで終わるので、読み終えてから白けた。

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