「錆喰いビスコ4 業花の帝冠、花束の剣 (電撃文庫) 瘤久保 慎司」期待を裏切らないアクションと物語と面白さ
あらすじ
濃密な死の香りに包まれる王の子を寒椿が生かす。煮え滾る鮮血の海から抜け出した子供・シシを救ったのは――、
「俺が誰だか知ってるなら。ガキより大物狙え、腰抜けども」
疾風無頼の兄上――赤星ビスコだった。
九州が誇る巨大監獄『六道囚獄』。そこには花を操る人造人間・紅菱の一族が収監されていた。人間に逆らえない宿命を背負い、監獄の中で虐げられる紅菱たち。しかし彼らを捕らえているのもまた、桜を操る紅菱で――。キノコの生命力を奪い咲き誇る花々。進化のキノコ『ナナイロ』の胞子により生じた未知なる花力が日本を動かす!
ネタバレ起承転結
- 起
九州のキノコ狩りのところへ向かったところ、キノコ狩りの地には誰もいなかった。全員が牢に捕まったと聞いたビスコらは六道地獄と呼ばれる牢へと向かう。そこで脱獄してきた一人の少女を救うこととなる。父のような男になろうとしていると自己紹介する少女シシ。シシは、人間の奴隷として人工的に作られた生命であり紅菱であった。本来ならば人間に逆らうことが出来ないはずに紅菱にも関わらず戦えるシシ。
キノコ狩りたちを解放させるためになにか突ける弱みがないかと六道地獄に忍び込むビスコとミロ。彼らは六道地獄を司る男であるサタハバキを目撃する。 - 承
サタハバキをどうにかする方法を考えるビスコら。ビスコらがでかけている間に留守番をしているパウーとシシの元に脱獄者を捕獲するためにサタハバキが現れる。戦うパウーとサタハバキ。危機一髪のところにビスコとミロが現れシシとシシ父の弁護をする。弁護を聞き入れたサタハバキは、シシ父の無実を理解する。
だが、シシ父は無実でも逃げたシシは有罪、また様々な難癖にも近い罪状を告げてビスコ・ミロらと対立することとなるサタハバキ。キノコの生命力を吸い込み自らの攻撃力とするサタハバキの能力により危機的状況に陥ったビスコら。ビスコはサタハバキら地獄の番人たちには逆らえない呪いをかけられた上で、ビスコ・ミロ・シシは地獄の牢へと連れて行かれる。そして実は紅菱だったサタハバキは、自ら含めて全ての紅菱を1週間後に死罪と言い渡す。 - 転
地獄の牢で、ミロに告げられた通りの脱獄を行うビスコ。途中で弟である壱号も救出し、ミロとの合流を狙う。途中でシシが死にかけ、ビスコが自分の心臓傷つけて胞子を出してシシに与え助ける。
ミロはビスコらとは別の牢にいれられた上で周囲を眺め、紅菱たちがのびのびと暮らしていることを知る。シシの父と出会い、食えない男である彼とやりとりをするミロ。シシ父はサタハバキと話し合いをするという。
ビスコとシシはミロとの合流狙いで移動していて闘技場へとたどり着く。そこで見たのは一方的になぶられる紅菱の人々。シシが飛び込みミロに与えられた能力で戦い救出。そのシシに呼応するように、他の紅菱たちも人間に攻撃できるようになる。そして起きたのは、今まで抑圧されていた紅菱たちによる人間への復讐劇。シシ父が現れそれを止め、本来ならば王族として罰を受けなければならないシシから権利を奪うことで救う。
サタハバキと決着をつけようとするが、洗脳しようとするも失敗する。しかし全員の力を合わせて戦いサタハバキを無力化する - 結
シシは父を殺し次の代の王となる
予想を裏切れ、期待を裏切るな
物語は予想を裏切れ期待を裏切るななんて言葉があるけれど、錆喰いビスコは本当にそういう話だとおもう。
私達が見たいもんを見せてくれて、格好いいアクションやってくれて、きっと最後はこうなる(なってほしい)という期待は外さず、道中の流れをかっ飛ばしてくれる。
錆喰いビスコで私が一番見たいのってめちゃくちゃ勢いあって面白くてテンション高いバトルだ。
続いて男同士の強感情(ビスコとミロ)、なのに普通に成立しているビスコとパウー(強いパウーが照れるのめっちゃ好きだしビスコはパウーをないがしろにしているようでいてある程度気にしているのが超好き)。
そのどちらもをしっかりと描写してくるから、強い。
今回の物語は、冒頭で『九州のキノコ狩りを救う』『シシを助ける』だと描写される。
こちらの予想したその点は裏切らないものの、途中でばかすか予想外の出来事が起きていく。
- 飄々とした食えない男とちゃらんぽらんの中間地点のシシ父
- 実は紅菱だったサタハバキ
- 馬ーーーーーーーーー!?
こういった予想外の展開をはさみつつ、きっちりと予想通りの場所に落としてくれるからビスコは面白いんだよなあ……。
今回もちゃんと九州のキノコ狩りを救い、シシも助け、壱号も脱獄している。
そういう期待を一切裏切らないの最高に面白い。
ビスコやミロはどんどん強くなっていく。
でも敵もガンガン強くなってって、まじで勝てるのか?というレベルの相手が出てくる(今回はサタハバキ)。
でもかならず勝てると信じて読めるし、一時的に敗北してもミロの頭脳かビスコの戦闘力があれば大丈夫って思える。
この信頼しながら読めるかんじ、最高に良い。
ビスコにすごい勢いで懐く少女に対して特段嫉妬はしないパウー(正妻の貫禄)
正直に言うと予想外すぎたしさいっこうに良かった。
マジで良かった。
最高だった。
正妻の貫禄強かった。
しかも今回照れシーンもあって可愛かった。
登場シーンは少ないまでも超良かった。
最高だった。
今回パウーの登場シーン自体はものすごく少ないんだけれど、序盤のミロとのやりとりが可愛いというか格好いいと言うか好きだというか。好きだなあ。
「あのなあ。お前、服ばっか何着持ってきてんだよ!? どれも蟹に乗るような服じゃねえ。いつものバイク乗りの格好で、どうして駄目なんだ!?」
「野暮なことをっ。夫婦の旅行に、洒落っ気なしで行けるものかっ!」
ここのパウーがまあとにかくかわいい。かわいい……? かわいい。たぶんかわいい。
ビスコのことが好きなのがガンガンに伝わってくるんだよなあ。
夫婦の旅行(ただし弟つき)とこの行程を認識しているパウーは可愛い。
このあとの、シシ登場でミロのほうが若干動揺しているあたりも可愛いんだよ。
(パウー、なんでそんな冷静なの!? 仮にも旦那に、あんな……!)
(はは。ミロ、あれでいちいち嫉妬するほど、私は未熟ではないぞ)
パウーは長い黒髪を手櫛で後ろへ流し、胸を強調するように、得意げに腕を組んだ。
(シシはまだ子供。女としての、大きさが違う)
そう言い切れるのは強いよ。本気か……?
シシがかわいい&格好いい
父のような男になるといい、皆が王女扱いしてくるのは嫌で、自分を男と叫ぶ少女であるシシ。
女の肉体は弱いから嫌だ、という彼女が、パウーの鉄棒ぶんまわす戦い方を見て、女でも強いのだ、と認識するあたりがすっごい好きだなー。
とはいえその後女の体が云々は特段無く、彼女の自称は王子である。
このままだと紅菱の王国とかでも作って反乱起こすのかなあ……。彼女がどう今後物語を動かしていくのか、ビスコと敵対するのか楽しみ。