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「フミヤ先輩と、好きバレ済みの僕。 (BeLuck文庫)椿ゆず」自己肯定感高く能動的な主人公が可愛い

フミヤ先輩と、好きバレ済みの僕。 (BeLuck文庫)椿ゆず

フミヤ先輩と、好きバレ済みの僕。 (BeLuck文庫)椿ゆず

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あらすじ

愛らしい見た目の高校生・幸朗は、おしゃれなカフェのイケメン店員・文哉にひとめ惚れする。奇跡的に連絡先を交換し浮かれながら登校すると、突然超モサい先輩に呼び止められ…その男は文哉本人だった! 
学校では容姿を気遣っていない文哉に、美意識の高い幸朗はショックを受ける。しかし、文哉の優しい内面を知るうちにどんどん惹かれていき…。
「変な俺も丸ごと愛してね」「…キスしてもいい?」
二人の“好きかもしれない”が“好き”に変わっていく過程に、尊さが大爆発!

めちゃくちゃ面白かった!
自己肯定感の高い主人公と、飄々とした先輩の組み合わせがとにかく最高で、多様なセクシュアリティが当たり前に描かれるイマドキっぽい空気感な一冊だった。
能動的で自分の好きに正直で頑張る主人公が好きなので、そういう意味でも面白かった。

能動的で頑張る主人公と掴みどころのない先輩、このカプ最高

とにかく主人公のさっちゃんが可愛いし好感度高すぎ。

カフェで出会ったイケメン男性店員に一目惚れして、初対面で「僕はあなたの恋愛対象に入りますか」って聞いちゃうような、自分の好きに対して一直線で、好きなのを包み隠さず全面に出していくスタイル。
そして、男も恋愛対象に入ると答えてくれたイケメン店員と連絡先を交換し、徐々に相手を知っていき、そんななかで学校で声をかけてきたモサい外見の先輩がそのイケメン店員の学校でのスタイルだと知り……という流れの物語。
序盤の展開的にさっちゃんが一人でグイグイ行く話なのかなと思いきや、さっちゃんもグイグイ行きつつも先輩もどこか飄々とした雰囲気出しつつさっちゃんが好きなんだなっていう雰囲気を醸し出しているので、二人の会話シーンやじゃれているシーンは読んでいてニヤニヤし続けてた。

わたしは基本的に好きな相手へグイグイ行くスタイルのキャラが好きなので、即座に先輩へ恋愛対象に含まれるかの確認から入るさっちゃん、めっちゃ応援したくなる。
それ以外でも、メイクが好きだからメイクする、可愛くなりたいから可愛くあろうとするさっちゃんの、好きなものへまっすぐな姿勢は読んでいて楽しい。

もともとさっちゃんのお洒落や可愛くなりたいって感情って、自分のためにするものだった。可愛い自分が好きだから可愛くなりたいし、メイクが好きだからしたい。
そんなさっちゃんが先輩と出かけるからって、基本は自分のためにに加えて少し先輩のためにのお洒落も加えて可愛くなろうとする、っていうのがさ~~~。そういう変化に人は弱い……。自分のためのお洒落が好きな人のためも含めたお洒落になるってもうめっちゃかわいいじゃん。
最終的には自分のため半分、先輩のため半分になるのも可愛い。さっちゃん、めちゃ可愛い子。

対するフミヤ先輩は、バイト中はキリっとしていて格好いいけれども普段は無気力系で飄々としてる陽キャ。この掴みどころのなさがまた良い。
バイト中はキリッとしてるし仕事もデキるし雰囲気も良いしで格好いいのに、学校じゃ髪の毛もぼさぼさだしだるそうだし、でも友達とは無気力ながらも楽しそうにお喋りしている。この塩梅がすごい良い。

なんていうか、キャラの会話がすごい良いんだよな。先輩とさっちゃんの会話もだけど、先輩と妹たちの会話も良い。

「……キモ、フーフーしてって。おにい、それはない」
「おにいは、自分のキモさよりも、さっちゃんが火傷しないことを選んだんだよ? 君たちにわかるかな?」
「ねー待って! もっとキモいんだけどぉ! 駆逐してぇ~~!」

この兄妹のやりとり、うまく言えないんだけどなんかすごく良い。妹ちゃんの「ねー待って!」のあたりかな……。
この部分以外にも、先輩が友達と無気力気味にしている会話や、さっちゃんと友達のノリの良い会話、どれも全体的に読んでてすごく楽しかった。

サブキャラまで全員良い奴

このあたりもすごくイマドキっぽいなと感じた。

この作品、本当に嫌な奴が一人も出てこない。恋愛ものらしく当て馬っぽいキャラは出てくるけれども処理がうまい。
先輩に片思いしてるライバルの女の子が出てくるんだけど、主人公とバチバチするんじゃなくて、「先輩のどこが好き?」って静かに語り合うシーンがある。てっきり「男だから」「女なのに」みたいなやり合いが発生するかと思ったら拍子抜けした。

こういうときに「男だから好きになってもらえない」というのが入るのはある意味様式美なんだけど、先輩もバイなのでそういう方向に行ったりはしないというのは面白かった。
ただ、「先輩はバイで女子も恋愛対象に含まれるので、僕じゃなくて彼女を選ぶかも知れない」という方向へのゆらぎになるのはこの話ならではだなとも感じた。

他にも、さっちゃんの親友の女の子であるモモも主人公の恋を全力で応援してくれるし、本当に全キャラが良い奴。さっちゃんと先輩の恋路がうまくいったのを知ったモモが号泣するとこ可愛くて笑っちゃった。

全員良いやつの話が好きっていうわけじゃないんだけど、舞台装置的に嫌な面だけ出てくるキャラというのがいないっていうのはこんなに読みやすいのかと思った。
というか、良いやつとは言っても主人公ちやほやの方向に行くわけじゃない。前述の自分も先輩が好きだと告げてきた当て馬の女子だってさっちゃんと会話したぐらいでさっちゃんageになるわけでもない。みんながそれぞれ自分のやりたいこと・やるべきことをやっているのだけれども、キャラ全員の性根が良いのでいいやつになる、っていう感じかも。

キャラたちがマイノリティの性自認を気にしてない

主人公のさっちゃんがゲイ、相手の先輩はバイ、さっちゃんの親友であるモモはビアンで彼女持ち。出てくるキャラクターたちがそれぞれマイノリティの性自認なんだけど、同時にそれで悩んでいる描写はない。「男なのに男を好きになってしまった……」的なシーンはほんと全然ない。
それだけ彼ら・彼女らは自分がそうだって認識しているんだなって読めて、なんかそれはそれで今どきすごいなとも感じてしまった。

物語って葛藤があると作りやすいとか言われているんだけれども、一昔まえまではその葛藤として「男なのに男を好きになってしまった」「相手はノンケだから振り向いてもらえない」みたいなのが来ることが良くあった。
でもそうじゃなくて、そういう悩みはとうの昔に終えてるキャラが「どうやって好きな人を振り向かせるか」に全振りしている。これが読んでて気持ち良い。

主人公のさっちゃんと親友のモモが、男女ではあるけれども相手は恋愛対象外とわかっているので一緒にお泊りしたりしてるのも可愛い。モモの彼女もさっちゃんは問題ないと認識してくれている。そういう部分もすごいなーって感じた。

文化祭でメイド喫茶をすることになるシーンが特に好きなんだよね。
男女全員メイド喫茶となり、主人公がクラスメイトの男子にメイクをする。可愛いを大事にするさっちゃんがするのだから当然変なメイクになんてなったりせず、男子はめっちゃ可愛く出来上がる。
それを周囲がバカにしたりするんじゃなくて「可愛いじゃん」って楽しむ方向性になるのがいいんだよね。メイクされた本人も「メンズメイク教えて」って言ってくる。

「さっちゃんすげー! マジで神じゃん!」
「今井、かわいい……俺、新たな扉開きそうなんだけど」
 調子に乗った今井が、メイド姿でくるりと回り、「うっふん」と男子生徒たちにウインクをする。
「……中身が今井だからやっぱ扉閉じたわ。ごめんな」

とはいえ、される男子が本人がそういうキャラなのでシーン自体はコメディテイストなんだけど、とはいえものすごくハッピーに終わり、こう来るかとなった。


大きな事件が起きるわけじゃないけど、キャラクター一人ひとりの魅力と、心地良い会話のテンポで最後まで楽しく読める一冊。ハッピーなラブコメが読みたい人には全力でおすすめする!

フミヤ先輩と、好きバレ済みの僕。 (BeLuck文庫)椿ゆず

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