「ガリ勉地味萌え令嬢は、俺様王子などお呼びでない」邪魔役という立場以外理念もなにもないキャラはなんのために生きてるんだろうね

★★★☆☆,TOブックスざまぁ,ファンタジー,三角関係,両片思い,恋愛

あらすじ

「……血吸い花だ。それに触ったら、爛(ただ)れるぞ」
国中の貴族子女が集まる魔法学園の裏庭で、伯爵令嬢シャリーナは、地味で根暗な本の虫・田舎の貧乏男爵家三男のリオルと出会い――初めて恋に落ちた。
さっそくその日から猛アタックを開始するも、リオルの態度はそっけない。彼は貧乏男爵という身分や魔法が使えないことにコンプレックスを抱えていて、シャリーナの本気を信じきれないのだ。
そんななか、なぜか全然お呼びでないこの国の第一王子が「お前、俺を知らないのか」「フッ……お前、面白いな」とかなんとか言いながら付きまとってきたうえに、勝手に妃候補に認定してきて――

初恋相手に猪突猛進なヒロインと本好き頭脳派少年が王道王子に立ち向かう、 ガリ勉地味萌え令嬢シリーズ第1巻!

こんな人におすすめ
  • 当て馬をつかってイチャイチャしまくる二人が見たい人
  • ハイテンション女子とローテンション冷静男子のラブコメが見たい人
  • オレ様がざまぁされるのが見たい人

これは一種のざまぁというかアンチ(アンチミステリーなどのアンチ)俺様モノというか、一般的なテンプレをひっくり返して面白いでしょするタイプの物語なのかな。
よく少女漫画や少女小説にいる「お前、面白いやつだな」タイプのキャラクターを笑い者にし続ける物語。
ギャグのペースはノリ突っ込みや二人のやり取りは面白かったんだけれども、当て馬への処理や対処があまりに雑すぎて全体を通して面白いとは思えなかった。

 

片思しているというか、読者からしたらもう両思いですよねと丸わかりな、ガリ勉眼鏡少年と彼が大好きな伯爵令嬢。彼に好かれるために食べやすいサンドイッチを作ったりあれやこれやとくっついているが、なぜか俺様系王子に好かれてしまう。
俺様王子は、何をしても自分への好意の裏返しだと認識し、全力の牽制すらもかわいい子猫扱いするし、ガリ勉眼鏡男子への扱いが酷い。こっちの話を何も聞いてくれない。
更に言えば周囲の人間も誰も主人公カップルの話を聞いてくれず自分の言い分を言うばかり。
そんな状況で、俺様王子の妨害をうまいこと恋のスパイスにしつつイチャイチャし続けるメインカップルの物語。

 

いやほんと誰も話を聞かねえ……。
物語の都合上誰か一人でも王子側の人間が話をまともに聞いたらまともに決着がついてしまうからとはいえ、ひたすら誰も話を聞いてくれないのは読んでてストレスがひどかった。ギャグという描写に収まる範囲内でもないんだよな。

ひたすら一方的に自分の話を言うだけ! 言うだけ言って帰っていく! 主人公の話は曲解して王子狙いと決めつける! みたいなキャラが複数人いる。これ1人で十分だろと思うようなキャラが複数人いる。マジかよ。
みんな行動の流れが同じなので、これをさばくガリ勉眼鏡男子も別にすごいなーとは思わない。ルーチン処理だもんな。

 

王子がただ思想も何もなく主人公たちの敵であるというだけの存在なんだよね。
欲望としては主人公がほしいというのはあるけれども、それ以外の理念もやりたいこともなにもない。ただの敵役で邪魔役で当て馬でしかない。主人公のどこに惚れたのかもよくわからない。

「おもしれー女」テンプレってたしかに最近ではネタにされる方向でちょくちょく使われているけれども、実際のところそんなに別に面白くないんだよね。
不躾な人に不躾だと言う。たったそれだけのことを今までされてこなかったわけがなく、ただただ特段目立つおもしろい場所がない主人公に興味をもたせるためのアイテムとして、惚れる側のキャラクターをそれだけ社会経験が薄く他人に意識されたことのないちやほやされるだけの人間とする。惚れさせるアイテムとしてはかなり雑だなと思う。この話の場合は王子がめっちゃ薄っぺらいところから始まるけども。

 

ついでに言えばヒロインが初期にやっていたことも、内容だけ見れば俺様王子とほぼ変わらないんだよな。

彼女の場合はガリ勉眼鏡男子からも好意があったからセーフだけれども、特に初期のまだ好意をちゃんと持たれているわけではない/好意を表されていない頃は、自分に興味がなく見える相手に、相手の都合を聞かず、自分の好意を一方的に押し付ける行為を繰り返しているだけ。
サンドイッチを作ってあげるのと自分宛てだと思い込んだクッキーを奪うは与える/奪うで行動としては逆だけれども、好意を笠に好き勝手やっているというのは変わりがない。
だから、主人公と王子は表と裏ですらなく同一なんだ。

それを最後に言われるのかな?と思いきや、最後も今更に全員の目が冷めて主人公とガリ勉眼鏡の愛を理解できるエンドで終わってしまった。なんだこれは。

 

ラストの微妙さは本当にすごい。
今まで何を言われても分厚いフィルター越しにしか物事が見れなかった人たちが、突如フィルターが外れて現実が見え始める。
えっ、それでいいならもっと事前にフィルター外せばよかったじゃん。なんで今突如外れるんだ。気づくべきタイミングは過去に山のようにあったよね? 前日に耳掃除でもしたのかな?

しかも、やっている内容としてはさほど主人公と変わらないなあと思っていた王子がああいうことになるわけで。うーん……と思ってしまった。

 

ただ、主人公とガリ勉眼鏡のやり取りはホントかわいいんだよね。
「ありがとうございます、大好きです!」「知ってる」みたいなハイテンションとローテンションで愛の遣り取りをするのもかわいい。可愛いから、もう下手に当て馬王子なしで物語進めばよかったのになと思った。
なんかもう王子一族がただの当て馬扱いすぎて可哀想になってくるんだよ。

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