「天使は炭酸しか飲まない」伏線やポイントが綺麗に回収される物語
あらすじ
記憶と恋がしゅわりと弾ける、すこし不思議な青春ストーリー。
恋に悩みはつきものだ。
気持ちを伝える勇気がほしい。意中の相手の好きな人が知りたい。誰かに悩みを聞いてほしい。背中を押してほしい。
そんなやつらの気持ちが、俺には痛いほどわかる。
忘れられない過去があるから。そして、彼らを救える「ちから」があるから──。
だから、俺、明石伊緒は“天使” となった。
「やっと見つけたわ、久世高の天使」
恋多き乙女、柚月湊の異常な惚れ癖を直すため、天使は少女の頬に触れる。記憶と恋がしゅわりと弾ける、すこし不思議な青春物語。
すげー良かった。他人の恋愛成就のために奔走するちょっと不思議なちからを持つ少年と、惚れっぽすぎて片っ端から惚れてしまう自分の性格をどうにかしたい少女の物語。
終盤彼女の惚れっぽさの理由が判明してから先、ぱたぱたとドミノ倒しのように小気味よく物語が駆け抜けていく爽快感がすごい。
前半にあった『主人公が天使という名称を使っていろんな人の恋愛成就の手助けをしている』『ヒロインに片思いする少年からの恋愛相談を受けて彼女の好きな相手を見極めようとして近づいた』『天使の行動の対価は貰っていない』という要素など、今まで出てきた様々な情報が最後のイベントに全部まとまって行くのが楽しい! あああの出来事、あの情報! などと綺麗にドミノが連続で倒れていく。
本当に些細な情報までもが最後につながっていくのが良いんだよね。
正直なところ『学校三大美女』みたいなのって設定としてもキャラ付けとしても今どきどうなの? と思っていた。でも、読み進めていくうちに、彼女の惚れっぽさと同じく自ら捨てることのできない呪いのアイテムみたいなものとしての認識が出てくる。
いくら称号みたいなもんでもいらない人は心の底からいらない、でもそれをものすごく欲しがる人もいる。恋愛関係と同じく人と人のわかりあえなさというかどうしようもなさが出ててすごく刺さった。
主人公は単に人が良い+他人の好きな相手がわかる能力があるからこそ恋愛成就のために奔走しているのかな? とおもいきや、こちらも重い設定があり、たしかにそれなら他人に告白をしてもらうために行動するなと納得。
冒頭で主人公が少女に能力がバレる原因を作った天使の相談相手の少年。彼に対してのアドバイスを通して、主人公が自分の過去を悔やんでいることを出していく描写が秀逸。
最初はてっきり告白が成功するかどうかを教えて背中を押すか止めるかだけかと思いきや、告白しないで後悔するぐらいなら!と、相手を納得させた上で背中を押す行動をするのが格好良かった。そうだよなあ、やらないで後悔するよりやって後悔したほうがいい。なおかつ、自分を好きになった人に惚れてしまう少女が真横にいるなら尚更その部分に説得力が出る。
物語としての構成がうまいし、並べられたドミノが崩れていくような心地よさがある話だった。
意図的なヴィランポジションのキャラクター以外は嫌味なく良い子ばかりなのも読みやすかった。